2018/11/11
NO.139

 

“尾瀬”と聞くと、思わず唱歌 『夏の思い出』 を口ずさむ方が多いのではないでしょうか。人々が憧れる “尾瀬” に私たちも行ってみたいと、以前から計画を立てていました。とは言え、シーズンは観光客でいっぱいです。下見をしたスタッフによると、シーズンオフなら人が少なく、秋の “草もみじ” もまた素晴らしいとのこと。そこで101617日、少し遠出して尾瀬でのハイキングを楽しむことにしました。
 “尾瀬国立公園”は、西に“至仏山 (しぶつさん・2228m”、東に東北最高峰の “燧ケ岳 (ひうちがたけ・2356m” をはじめ、周囲を2000m級の山々に囲まれています。群馬 ・福島 ・新潟の3県にまたがる盆地状の高原で、その中心となる“尾瀬ヶ原 1400m” は東西6km、南北2kmにわたる本州最大の湿原です。多くの人々の努力によって貴重な自然が保たれ、日本の 「自然保護の原点」 とも呼ばれています。

今回の日程は1泊2日、1日目は群馬県側の登山口 “鳩待峠 (はとまちとうげ・1591m)” をスタートし、宿泊先の “弥四郎小屋” を目指します。そこから “尾瀬沼ビジターセンター” まで足を延ばし、“尾瀬沼” の景色を楽しみます。2日目は “東電小屋” を通り “ヨッピ吊橋” を渡って、来た道を戻ります。道はすべて木道というのは初体験、「どんな風景に出会えるかしら」 と、みんな胸を躍らせていました。

 



   

   

午前4:30、登山口 “鳩待峠” に到着。辺りはまだ真っ暗、空には星がまたたいています。空気がヒンヤリと冷たく 「やっぱり寒いね」 と、言葉を交わしながらヘッドライトを装着。次の中継地 “山の鼻ビジターセンター1400m” を目指して、いざ出発!
 ヘッドライトで足元を照らし、滑らないように注意しながら長い木道を下っていきます。すると突然、静まり返った暗闇の奥から女性の悲鳴のような声が聞こえ 「何の声?」 と、みんなの間に動揺が走ります。すかさずスタッフが 「シカの鳴き声よ」 と教えてくれ、ホッと緊張がゆるみました。

 
 

辺りがようやく白み始めた頃、“至仏山” のシルエットが浮かび上がってきました。実は、当初は “至仏山” に登る予定で2泊3日の計画を立てていましたが、天候が整わずやむなく断念。「やっぱりあの山に登りたかったわね」 と、みんな残念そうに眺めていました。
明るくなるにつれて、木道の両側に群生する笹の緑や、ブナの森の黄葉が目に入ってきます。葉の色は決して鮮やかな黄色とは言えませんが、秋の深まりを実感。木道は霜でうっすらと白く 「滑るから気をつけて!」 と、声を掛け合いながら進みました。

 
   午前5時50分、木道を下ること約1時間、“山の鼻ビジターセンター” に到着。前方に黄金色の “草もみじ” が一面に広がっていて、「わあ、きれい!」 と一斉に歓声が上がりました。早朝にもかかわらず人の姿がチラホラ、電光掲示板には気温が零度と表示され、「寒いはずね」 と、みんな納得していました。ここからいよいよ、大湿原 “尾瀬ヶ原” です。高鳴る胸を抑えて、元気に出発しました。  



   

   

広大な “草もみじ” の真ん中に、2本の木道がどこまでも続いています。後方に “至仏山”、前方には “燧ケ岳” がそびえています。尾瀬の天気は変わりやすく、2つの百名山を同時に眺めることができるのは、とてもラッキーです。
 山の裾野にはベールのような真っ白い霧が立ち込めていて神秘的。木道の下は湿地、澄んだ小川が何本も流れています。みんな口々に 「きれい!」 を連発、「でもここで落ちては大変!」 と、足元にも気を配りながら歩いていきます。

 
 

木道の脇には、池塘と呼ばれる大小の池がいくつもあります。池塘にはかわいらしい “ヒツジグサ” が浮かんでいたり、ゆらゆらと水蒸気が上がっていたり、とても幻想的。たくさんある池塘を目で追っていると、水面に写る “逆さ燧ケ岳” を発見。「すごい!」 と感動の声が上がりました。
 太陽が顔を出すと、黄金色の “草もみじ” がキラキラと輝いていました。高くそびえる “燧ケ岳”、草もみじの向こうには白い幹のダケカンバの林、緑の笹原、そして赤いナナカマドも色を添えていて、まるで絵のようです。スタッフの一人が 「メルヘンの世界みたい」 と言うとみんな大きく頷き、ただただウットリ見とれていました。

   

   



     

 

午前8時20分、宿泊先の “弥四郎小屋” に到着。重いリュックを降ろし、次はもう一つのビューポイント “尾瀬沼 1665m” を目指します。ゆるやかな傾斜の木道をゆっくりと登っていきます。
 尾瀬で最も有名なのは “尾瀬ヶ原” ですが、峠を越えた別のエリアにある “尾瀬沼” も絶景スポットとして知られています。足元には色鮮やかな木の葉が落ちていて、踏むたびにカサカサと音を立てます。途中から木道が山道に変わり、思いがけず登山気分を味わうことができました。30分ほど登っていくと、ほのかに甘く爽やかな香りが漂ってきて、スタッフが 「カツラの葉の匂いよ」 と教えてくれました。
 峠を抜けて再び平坦な木道に出ると、穏やかな水面の “尾瀬沼” が見えてきます。「まるで、湖みたい!」 と、予想以上の大きさにびっくり! 木道の両側には笹が生い茂り、コメツガやカラマツなどの針葉樹が立ち並び、小川も流れています。

   
 

1030分、尾瀬沼の西の端 “沼尻平 (ぬしりだいら)” に到着。ひっそりとたたずむ “尾瀬沼” を心行くまで眺め、次は “尾瀬沼ビジターセンター” を目指します。1時間ほど歩くと、草もみじの中に3本カラマツがポツンと立っています。尾瀬沼を訪れる人々から 「3本カラマツ」 と呼ばれて愛されているそうです。

 

   

 

1145分、“尾瀬沼ビジターセンター” に到着。秋空に映える燧ケ岳、それを取り囲むように広がる尾瀬沼の景色は最高! 疲れが一気に吹き飛びました。
 少し休憩し、来た道をひたすら戻ります。午後2時40分、やっと “弥四郎小屋” に到着。「足が棒のよう」 と、みんなヘトヘト。歩数計をつけていたスタッフが 「なんと、4万5千歩も歩いたのよ!」 と、興奮気味に話してくれました。歩行タイムは約8時間、登山以上の長いハイキングでした。
 嬉しいことに “弥四郎小屋” には、山小屋には珍しくお風呂があります。みんなゆっくりとお湯につかり、疲れを癒しました。

 



   

   

翌朝は気温が高く霜は降りていませんでしたが、残念ながら雨がポツポツと降り始めていました。部屋から見えていた “至仏山” は、ガスに覆われて見えません。
  朝食を済ませ6時40分、“弥四郎小屋” を出発。山々に霧が立ち込め、幻想的な雰囲気を醸し出しています。「この風景もまた趣があっていいわね」 と話しながら、日本画のような落ち着いた景色の中を歩きます。

 
 

7時10分、“東電小屋” を通過したところで、本格的に雨が降り出してきました。滑らないように注意しながら、木道を小股で進んでいきます。“ヨッピ吊橋” を渡ると、一段と大きな池塘の一帯が現れ、水面に小さなヒツジグサがびっしりと浮かんでいました。

 
 

8時55分、“山の鼻ビジターセンター” に到着。長めの休憩をとり、晩秋の尾瀬をしっかりと目に焼き付けました。最後は駐車場がある “鳩待峠” を目指して、下ってきた道をひたすら登って行きます。前日は真っ暗だったので周りの景色が見えませんでしたが、木々の葉が色鮮やかに紅葉していて、目を楽しませてくれました。いつしか雨がやみ、坂を登る足取りもスピードアップ。1025分、全員無事 “鳩待峠” に戻ってきました。

 

    2日間で歩いた距離は約36km、総歩行タイムは11時間でした。ハイキングとはいえ、疲れは登山並みでしたが憧れの尾瀬を満喫することができ、みんな大満足でした。草もみじに派手さはありませんが、色鮮やかな紅葉の景色とは違うしっとりとした独特の風情に、心も体もリフレッシュすることができました。そして早くも、「今度こそ “至仏山” に登ろうね!」 と話し合っています。